解は「ひととして成長すること」「成長をサポートすること」

 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090429:TITLE=ちきりんさんの日記『虐待事件ふたつに思うこと』を読んで、私も気になった虐待事件二つ。聖香ちゃん事件と、あかんぼに熱湯風呂事件。
 同じ日だったのと、基本的にChikirinさんと似たようなことを感じていたのだけれど、「解」についてはちょっと違う。

「泣き叫ぶ姿、おもしろかった」娘を熱湯風呂に 母と友人逮捕
4月28日12時27分配信 産経新聞

 2歳の長女に熱湯をかけてやけどを負わせたとして、警視庁少年事件課と綾瀬署は、傷害の疑いで、いずれも東京都足立区の無職で母親の少女(19)と友人の少女(19)を逮捕した。同課によると、2人は容疑を認め、「泣き叫ぶ長女の姿がおもしろかった」などと供述。「娘に申し訳ないことをしてしまった」などと反省している。

 同課の調べによると、2人は3月12日午後5時ごろ、自宅マンションで食べさせたシューマイを熱いとはき出した長女の様子を見て、熱湯に入るお笑い芸人の様子を思いだし、長女を熱湯に入れることを計画。熱湯を入れたベビーバスに1分ほど入れ、両足に重症のやけどを負わせた疑いがもたれている。

 同課によると、2人は自転車で長女を病院に連れて行ったが、医師には「ポットの熱湯がかかった」などと説明。しかし、虐待を疑った医師が足立児童相談所に通告し、児相から要請を受けた同課が捜査していた。

 少女にはほかに、8カ月の長男がいるが、今年2月、足首を持って子供を振り回した際にできやすいという頭部外傷で入院しており、同課は少女が長男にも虐待していた疑いがあるとして調べている。


 あかんぼに熱湯? って普通の感覚ではないと思うでしょ。
 足をつかんで振り回す? 私にはできないわ! って思うでしょ。

 ところがこれによく似た状況をよく見るんだな。

 こどもが、犬や猫をかわいがろうとして尻尾を引っ張る。耳をつまむ。
 犬や猫は悲鳴を上げるけれど、こどもは自分が遊ぶときの金切り声の悲鳴と似た感覚でそれを受け止めて、一緒になってきゃいきゃい言う。大人が止めるまで、もしくは犬猫が本気で噛み付くまでやめない。

 こども自身はこれ、遊びだと思ってやってんのね。
 犬猫をおもちゃにしてる! っていう見方もあるけれど、こどもによっては
「犬猫も自分と一緒に楽しんでいる」
と勘違いしている子もいる。

 この母親もその類じゃないかなぁ。

 思春期の女の子って、怖いものを見たり興奮するときゃ〜って言うじゃない。
 その「きゃ〜」とこどもの本気の絶叫の区別がつかないんだと思う。

 無職で母親の少女(19)と友人の少女(19)でやったんでしょ?
 幼稚園児二人が、子猫を捕まえて
「きれいにしましょ〜ね」
って水風呂に入れて子猫がぎゃ〜ぎゃ〜泣き喚いている図式となんら変わらない、って思ったのよね。
 あ、猫を水風呂にいれたら、そのあとのケアしないと風邪ひいて肺炎になってころっと死ぬからね。やっちゃだめだよ。でもそれを、お人形あそびの延長やってるこどもに分からせるのは難しいんだよ。


 で、この事件の母親と、特に友人にとっては少なくとも「可愛い猫ちゃんを水風呂」と大差なかったんじゃないかと思う。
 こどもが泣く=面倒、ではなく、おもしろいっていう感覚。
 あかんぼの泣き声を聞いても、相手が本気で「熱い!死ぬ!」「助けて!」と叫んでいる声だという理解につながっていないから。

 つまりはこの二人とも、中身は幼稚園児〜小学校2年生くらいなんだ。


 育ててみて面倒ではない、と思えたってことは、子育て=人生のエンターテイメントとして見られる素養があるんじゃない? それだけでも殺しちゃった母親よりはかなり見込みがあると思う。

 ただ、泣き叫ぶあかんぼの声を「助けて」の意味だと変換できるだけの成長がないまま子育てを始めちゃったことが問題なんだと思う。

 反省したっていうのは、警察官からしかられただけじゃなく
「ものすごく熱くて痛かったのよ? わかる? あなたなら我慢できる?」
って諭されたからじゃないかと思う。
 たぶんこれまで誰も
「あなたなら我慢できる?」
っていう教育をこの母親にしてなかったんじゃないかな。



 ちょうちょの羽をむしったらいけません。
 猫のしっぽをひっぱったらいけません。
 あかんぼを熱湯に浸しちゃいけません。


 相手がつらいから。

 そのくらいのことからスタートしなきゃならない「お母さん」もこの世にはいる。
 だけど、それでも「あなたなら我慢できる?」っていうのを繰り返して、理解したら「お母さん」らしくなれるんじゃないかな。いあ、そうなるまでの間、ほっといたらこどもは犠牲になり続けるから周囲がサポートしなきゃいけないことに変わりはないんだけど。
 普通に考えたら、19歳で小学校2年の感覚のひとを、19歳らしくするのは大変だと思うけれど、19は無理でも、10歳児くらいにはできるんじゃないかな。自分がいたいことは人にはしない、っていうことを覚えるだけなら。
 だって餓死させたりしてないんだから、それなりの手間は掛けてたわけだし。
 ただし、困難なのはそのサポート方法が日本では出来上がってないことだよね。






 判っていて「我慢できないようにしてやりたい」感覚の持ち主を罰するのとは違う解が確かに必要だけどないわけじゃないと思う。

 つか、思いたい。